カフェオーレ

君からの連絡はあれっきり途絶えてイライラした俺は携帯を壁に投げつけて、もう何もしたくなくなった。日付を辿るのも嫌だ、みじめになるから。頭をかきむしって冷蔵庫を覗いて、もっと陰鬱になる。何も無い。
ソファに寝転んで、左手の甲をじっと眺める。
眺めてたって何も出てきやしないしそこにあるのはイライラの元凶のでかい引っ掻き傷だけだ。
「どうしたもんかね。」
人がいても嫌だしいなくても嫌だった、そんな中途半端な空間で君だけがすんなり俺のテリトリーにはまっていた。なんでいなくなっちゃったんだろうね。もっと優しくすればよかったなんて、自分で言ってて薄気味悪い。
ひとのなみだ、を見るのは初めてではなかったけれど、君のそれは随分効果抜群で、俺は何もできなかった。
まったくなんにも。
追いかける事すら。喉は、声の出し方を忘れた。
喉が渇く。
「いつもそれ飲んでるね。」
よくそんな甘いの飲めるねと、言いながらミルクティーを飲む君の横顔。憎らしい。それだって十分甘いさ、と言い返すと何も言わなくなるんだ。黙って紙パックを差し出す。
何も言わずに同じ部屋にいてくれたり、憂鬱な朝の変な電話に温められた。
何処に行ったんだろう、何してるんだろう、携帯の充電器、忘れていってるよ・・・。
頭がまわらなくなってきた。

今こそ俺にはあの甘ったるい飲み物が必要なんだ、
この鈍いモーターを回転させるガソリンになりうるのはあれだけだ。