しりとり

子供のあの日

子供の頃、大人になったら何でも出来るんだと思ってた。お金を稼いで、好きな事をして、どんな事も思いのままなんだって考えていた。現実は大人になっても8時間以上寝ないと起きれないし、大人になるとストレスたまったときに酒を飲むしか解決法がないの。10…

意地悪な水底

陽の光に照らされてきらきら光る水面に、くらげのようにおばあちゃんが浮かんでいる。ぶよぶよの体をビート板に預けて気持ち良さそうに浮かんでいる。第4コースは深さ3メートルだ。どこまで行っても、足がつかない。底までもぐろうと思っても、うまくいかな…

テリトリー

四角の線、丸い線、灰色の線。生まれた時から持っているペンで、自分のまわりに線を書いた。入ってこないでの証。入ってこられたら恋に落ちてしまうから、ひとは自分のまわりに線を書くんだよと教わった。私は線を書くのが得意で、濃く薄く、時に強く、色々…

くるしみは夢の中の国で味わって

眠るたびにある場所へ行くようになった。騒がしい大通りを一本はいった路地の、突き当たりにあるふしぎな扉。古いステンドグラスを抜ける橙色の光。開けたいけど、開いてほしくない、相反するきもちを飲み込みながら入るその部屋で、毎日8時間お茶を飲んで過…

好きとか言ってないで早く、

薄曇りの朝は特に優しい。だって太陽は笑っているだけでなにもしてくれない。小さな水たまりに映り込む自分を覗き込んで手を振った。 駅までの道のりを、白く濁る息を吐きながら歩いて行く。スキップも、ジャンプも、軽やかに踊る為の準備にすぎない。足首や…

ウイルス

朝が本当に弱くて陽の光が当たらないと起きられない。だからカーテンは開けっ放しで眠る。時々誰かが、夜中にのぞいていくから嫌だけどそれでも開け放しておく。光に当たらないと覚醒しないわたしのからだを、青い細いもやが静かに通り過ぎる、それは幽霊よ…

BLUE,SUNNY DAY BLUE.

「君は飛べるんだよ。」 そう私は飛べるんだった。助走をつけて踏み切るとからだが宙に浮く。翼は人には見えなくて、でもしきりに動かしていないと下降してしまう。疲れもする。空に浮くのはとても気持ちがよくて、歩くより飛んでいることのほうが多い。石畳…

ルービックキューブ

地下鉄に乗っている時に目の前のひとが随分熱心にルービックキューブをやっていてじっとその手元を見つめてしまった。かばんから手のひら程のそれを取り出して彼は次々に色を変えていく。赤から青。青から黄。何を考えてそんなにも素早く解くことができるん…

繰り出す夜

言うならばそれは、ただの暇つぶしだった。意味のないこと。アナウンスが次のサービスエリアで10分の休憩をとることを告げる。乗客の何人かは伸びをして、また何人かは安堵のような、ためいきのような声をかすかに漏らした。 自動販売機で紙コップのココア…

連続

君といることは常に驚きと疲労の連続だ。 新しいことを知るとき僕の体はとても大きな労力が要るし君はそれを知らない。 例えば明日海に行こうと日曜日に告げられ、そんなことできっこないとうっかり「いいよ」と言って本当に連れて行かれた時の僕の心境を、…

カフェオーレ

君からの連絡はあれっきり途絶えてイライラした俺は携帯を壁に投げつけて、もう何もしたくなくなった。日付を辿るのも嫌だ、みじめになるから。頭をかきむしって冷蔵庫を覗いて、もっと陰鬱になる。何も無い。 ソファに寝転んで、左手の甲をじっと眺める。 …