好きとか言ってないで早く、

薄曇りの朝は特に優しい。だって太陽は笑っているだけでなにもしてくれない。小さな水たまりに映り込む自分を覗き込んで手を振った。
駅までの道のりを、白く濁る息を吐きながら歩いて行く。スキップも、ジャンプも、軽やかに踊る為の準備にすぎない。足首や膝の裏や、背中、ぜんぶを意識して突き抜けるような感覚を忘れずに、できるだけ柔らかく強く。
自分のからだのすべてを支えながら、もっと遠くに行ける。じぶんひとりでも、真っ暗でも、自分の足で進める。


駅のミルクスタンドで珈琲牛乳を買った。両手で少しずつ飲み下すとほろ苦くて甘くてなにかを思い出せそうになった。好きとか言ってないで全部脱いでしまえばいいのに。なにも見えないくらい全部。

瓶を床に叩き付けて、振り返る人達を飛び越えた。