意地悪な水底

陽の光に照らされてきらきら光る水面に、くらげのようにおばあちゃんが浮かんでいる。ぶよぶよの体をビート板に預けて気持ち良さそうに浮かんでいる。第4コースは深さ3メートルだ。どこまで行っても、足がつかない。底までもぐろうと思っても、うまくいかない。
蹴りだした足をまっすぐに伸ばし、手も動かさずいけるとこまで行く。そろそろ止まるかなと思ったら水をゆっくりとかく。足で蹴る。ゆったりとした平泳ぎなら、どこまででも泳いでいける気がする。呼吸を乱さずにとにかく自分のペースで行くのがコツだと思う。疲れたら仰向けになって、足だけで背泳ぎをすればいい。
耳は水でふさがれて、自分の呼吸だけが頭に響く。


水底は意地悪に笑っている。
どうやったって届かない場所に背を向けて、泳ぎ続ける私を。