テリトリー

四角の線、丸い線、灰色の線。生まれた時から持っているペンで、自分のまわりに線を書いた。入ってこないでの証。入ってこられたら恋に落ちてしまうから、ひとは自分のまわりに線を書くんだよと教わった。私は線を書くのが得意で、濃く薄く、時に強く、色々な線を書いた。ひとに線を書く方法を教えてあげることもあった。二重に、三重に、波のように。時間も忘れる位に書いた。


線の外に欲しいものがあったらどうすればいいの?だって私は線の外にでられない。からだのまわりにまとわりつく境界線。ひきちぎることも消す事もできない真っ黒な一筋の闇。闇の向こうにはいつも目も開けられないくらいの眩しさがあって、私は下を向いて線を書いている。太く、強く、濃く描いた線はいつしかひとつの四角になって、初めてわたしはタイルを描けることに気がついた。外へ出る為の、足がかりを。
線はいつも自分のまわりで蠢く。タイルを描いて街へでる。