ウイルス

朝が本当に弱くて陽の光が当たらないと起きられない。だからカーテンは開けっ放しで眠る。時々誰かが、夜中にのぞいていくから嫌だけどそれでも開け放しておく。光に当たらないと覚醒しないわたしのからだを、青い細いもやが静かに通り過ぎる、それは幽霊よりも儚い。


目覚めると右腕が痺れていて、寝相の悪さを呪っていると手のひらの異変に気づいた。中心から、すみれ色の万華鏡のような模様が浮き上がっている。血管とも違う、きれいな紫色。ウイルスだ。テレビで見た。ある日突然、からだに発生して、少しずつ蝕まれていく。全身がウイルスに冒されて、甘い香りを漂わせてベッドで静かに動かなくなる。生命の終わり、明日の始まり。
薄紫の模様に包まれた私の身体の中でどこが一番綺麗に見えるのか、寝起きのぼんやり頭で考えながら隣で眠る君の身体をまさぐった。あたたかですこししめっぽくて、やわらかい。手のひらと手のひらを、重ね合わせて目を閉じた。


起きたら感染っていますように。
わたしのウイルスを、はじまりの種を。