自分ルール

早朝の歌舞伎町を歩いて新宿駅に着くまでに3匹ネズミを見たら3億円もらえる。という自分ルールを決めて本当にネズミを3匹目撃するとすごく楽しい。
やった3億円ゲットだ。何に使おう?3億円あったら何ができるの?まず長野に家を買うと思う。あとヨーロッパのどこかと都内にも一軒ほしい。3億じゃ足らないかもしれない。なんで家が欲しいんだろう。自分の居場所は、たくさんあるに越した事はない。
3億円の行方はどんどん膨らんでいく。欲しい物が沢山あるときは楽しいけれど、無気力な時の3億円の使い道はひねくれていて、「嫌いなやつのほっぺたを札束で叩く」とかそういうイヤらしい使い方しか浮かんでこなくてつまらない。もっと綺麗な楽しい想像をしたい。3億円あるんだし、何も考えずに南の島に行っちゃおう。
まず3億円が口座に入ってることを確認した私はその足で南の島行きの航空券を購入。それから新宿でもなんでもいいけど、服を買いに行く。南っぽい、リゾートらしい、ワンピースやサンダルを買う。あとは小さめのスーツケース。それにパスポートと着替えと常備薬とideapadを突っ込んで成田へ。まだこの時点ではあまり3億円の重みを理解していない。
行き先はどこだろう。ぱっと行けて、治安の良さそうな、グアムとかハワイとか定番過ぎる場所かもしれない。ホテルもついてるパックの。飛行機に乗り込んで、離陸して、ぼんやりする。0が何桁あるんだろう、と考えたりする。着陸。そこは常夏の島。空港職員だってアロハをきてレイをぶらさげているよ。ああ、なんて非日常なんだろう。ますます、夢か現実かわからなくなってきた。
ホテルにチェックインし、日焼けをしたくないのでまず全裸になってとても念入りに日焼け止めを塗った後に水着を着用し、短パンを履き、上着を着てビーチへ。ビーチには日本人もたくさんいるし多分アメリカ人やヨーロッパ人もたくさんいるだろう。想像力が貧困過ぎて、白い砂浜に白人がトップレスで寝そべっている場面ばかりが浮かんでくる。とにかく、そんなビーチに繰り出しながら、何も考えずにぼーっとする。数時間経つ。そして自分がいきなりハワイだかグアムだかに来てしまっていることを思って、「ああ、今なら何処へでも行けるんだなあ」と、そういうことなんだと思ったりするかもしれない。
贅沢せずにいれば、一生過ごせるかもしれないし、資金運用すれば、贅沢しながら一生過ごせるかもしれない。とにかく大金なんだよなあ、と考える。変な人に騙されない様にしなきゃ、とか、疎遠にしてた親戚にたかられないようにしないとなあ、とか、身の振り方も。
ヤシの木陰は意外に涼しく、時折吹く風が心地よい。白い砂を手に握りしめて、少しずつ力を緩めていくと砂がさらさらこぼれ落ちていって、それを見るのが楽しい。幾度となく繰り返し、夕陽が沈んでいく。夕飯はどうしよう。ルームサービスでいいかな。あんまりお腹が空いていない。
そうして部屋に戻ると、急に現実がぶわっと襲ってきて、家賃収入で暮らそうとかバルセロナにピソを買って暮らそうとかそういうことを真剣に考えて、相談できる相手は誰かしらと焦りだす。こういうときは誰に相談するものなのかしら。税理士?弁護士?ideapadを開いて調べる。ハワイの日はとっぷりと暮れて、私の鼻は少し日焼けをしている。