正しい松屋での作法

毎日自炊していると、あるとき無性にジャンクなものが食べたくなる。基本的に貧乏舌なので、フードコートののびたラーメンとかファミレスとかそういうBどころかC級なものをがつがつ貪りたくなるときがある。最近その欲求は主に松屋すき家で満たしています。
松屋すき家。24時間やってて駅のすぐ側にあって、早くて安くてBとCの中間といった感じ。とりわけ高校生のころから松屋様にお世話になっており、今までに何杯豚丼を食べたかは思い出せそうにありません。
松屋に行く時。それは大抵仕事から帰って来たとき。もしくは、お腹が空いてるんだけど、ご飯を作る程の時間はなくて外出しなければいけないとき。何もない休日に松屋に行くことはまずありません。時間がないときや疲れている時、いつも松屋は私を温かく迎えてくれるのです。この大都会東京で、母の如く深い懐。吉野家すき家と違い、全品に味噌汁がついてくるところも、母の優しさを感じます。
そういうわけで私は松屋に対して一定の敬意をもって接しているのですが、自分なりの松屋ルールを、いつか松屋が未曾有の豚肉不足とかで廃業してしまっても覚えていられるように書き記しておきたいと思います。
まず松屋に行く際には一人でなくてはいけません。大体ジャンクフードを食べるのは一人で、と相場が決まっています。カップルなんてもってのほかです。もしどうしても恋人同士で行く場合は、夜中にお酒を飲んでお腹が空いたけれどご飯を作る気がしなくて、酔った勢いにまかせて、というシチュエーション以外禁止です。服装はジャージか極度にラフな寝間着にできる格好のみ可。普段着での入店は店内の和を乱します。持ち帰りの場合のみ普段着も可とします。
友人同士での入店は居酒屋やクラブなどで飲み明かした後、ほろ酔い気分で朝定食を食べる場合のみ可です。昼間や夜間に行く際はその日一日部屋にこもっていて初めての外出の際のみ可とします。松屋は孤独で、孤高で、静かでなくてはいけません。
入店前には、食券機の前で悩まずに済む様、店の前のメニューで食べるものを決めましょう。小さい店舗では食券機が一台しかない場合が多く、悩んで列を作る事は他のお客さんや店員さんに迷惑です。松屋に向かう道すがらで食べる物を決めておくのが良いですね。
入店したら素早く食券機に向かい購入、席についたら食券をカウンターの店員さんがとりやすい位置に置きます。店員さんがお茶かお冷やを持ってきますので(こころのなかで)一礼。お茶を飲みながら1−2分待ちます。
今回は豚めし豚汁セットを例に説明します。豚めし、たまご、豚汁がセットで510円。ワンコインを微妙にはみでていますがリーズナブル。箸で豚めしの表面にたまごを入れる為のくぼみを作ります。肉をさっと横にわけるだけでOKです。そうしたらば、次は紅ショウガを乗せます。たまごポケットには乗せない様に気をつけて下さい。紅ショウガを大量に乗せる様子は、両隣の方に懸念をあたえることがありますので、混み合っているときには一度に大量に乗せるのではなく何度かにわけて丼にいれると良いかもしれません。大量の紅ショウガをほおばる姿は少し不気味です。乗せ終わったらたまごをポケットに割り入れ、白身のみをご飯部分に混ぜ込みます。ご飯がするりと滑らかな口通りになり箸がすすむようになります。この際に黄身を潰してしまうと、味の変化が楽しめなくなるので注意しましょう。
紅ショウガ、肉、ごはんの配分を緻密に計算しながら食していきます。豚汁がありますので、2−3口ごとに2すすりくらいのリズム感で食べるとより美味しく食べられるでしょう。ここで既に味に飽きてしまったひとは、サラダ用のドレッシングを少しかけてみるのもテクニックのひとつです。
残りが2/5程度になったら黄身を割り軽くかきまぜます。豚めし全体がまろやかになって、今までの引き締まった味とはまた違った味を楽しむ事ができます。ここでさらにドレッシングなどを投入して味の変化を楽しむのもよいですね。
食べ終わったらお茶を飲み、店員さんが近くにいる場合はごちそうさまでしたと一声かけて素早く退店しましょう。立つ鳥後を濁さず。次に来るひとがすぐに座れる様席を空けることがひいては自分のためにもなるのです。


好きなように食べてさっさと帰るのが正しい松屋での作法です。