夏の東京について

夏の東京は湿っぽくて、気温が高くなくても暑苦しくてひとがいっぱいいる。
私の中の一番古い「東京」の記憶は小学校低学年の頃で、叔母の家に遊びに行った思い出だ。
その頃叔母は介護士として練馬だったかその辺りで働いていて、住んでいるのも職場から歩いて15分くらいの1Kのアパートだった。
叔母の家は彼女が見立てた小物や人形等メルヘンなもので飾り立てられていて、幼い私は叔母の家が大好きだった。
玄関にはビニール製のカエルの人形やシルバーの写真立て、キャンドル等が並んでいて、
「一人暮らしってこういうものなんだ」と漠然と感じた。
私が生まれた時叔母は中学生で、私を本当の妹の様に随分可愛がってくれた。
今では疎遠になってしまったが、東京というと叔母のいる街という認識が頭の片隅に残っている。
ある年の夏休みに叔母の家に1週間滞在したことがあった。
その時叔母は1Kのアパートから2DKのマンションに引っ越して、祖母と二人で暮らしていた。
叔母の休みに合わせて色々なところに遊びに行った。
そのうちのひとつが「としまえん」だった。
手を引かれながら歩いたとしまえんは、さほど「遊園地」が好きでなかった私にとってただのだだっぴろい空間で、お化け屋敷とメリーゴーランドしか楽しめるものがなかったのであまりよく思い出せない。
絶叫マシーンの類いは怖くて乗れないので私程遊園地に連れて行く甲斐のない人間もいないと思う。

ただ、祖母と叔母と一緒にいられたことは楽しかった。
自分の家にいるのが大嫌いで帰りたくなかったので、連れて行かれる場所など何処でも良くて、むしろ一日中叔母の家にひきこもっていたって良かった。
叔母の家の近くには遊具が多い、木々が茂る公園があってそこで遊ぶのが好きだった。
私はその頃から短パンが好きでスカートは滅多にはかず(単に利便性の問題で)よく転んで膝をすりむいていた。
未だ残る大きな傷跡もある。
小学校低学年までは外で遊ぶのが大好きだったけど何のはずみかインドア派になってしまった。
もう膝を怪我する事はないと思う。