夏の日の14時の寝起き

真っ白い道を買ったばかりのワンピースで歩いていた。


空気は平坦で、快適な温度を保っていた。裸足に伝わってくる固くも柔らかくもない不思議な感触が心地よい。
右手にはビニール袋を持っているけれど、何が入っているかはわからない。わからないということは、気にしなくてもいいということだ。


ふと足下を見ると、何千、何万という真っ白なゴールデンレトリーバーがこちらを見上げて微笑んでいる。無限と言える程の数の、小さな犬が足下で蠢いている。不思議と嫌な感じはしない。ああ、この地面はゴールデンレトリーバーだったのかと思いながら、無限の犬達の中で歩を進める。犬達は鳴きもせず、呻きもせず、ただじっとこちらを見上げて微笑んでいた。踏まれた犬は鮮やかなピンク色の液体になって私の足首を染めた。



しばらく歩いていると前方に縞の猫が歩いているのが見えた。気付いたら自転車に乗っていて、ゆっくりブレーキをかけながら猫に近づく。鳴き真似をすると猫はこちらをちらっとみてすぐそっぽを向いてしまった。よく見てみると、猫の正面にはおじいさんが立っていて、ゴミ置き場から猫を追い払おうとしていた。おじいさんは鬼の様な形相で猫に向かって奇声を発し何やら威嚇のような動きをしていた。背筋がぞっとした。



急いでその場を離れ数分自転車をこぎ続けていると、真っ赤な自転車に乗った男の人がこちらに向かってくる。携帯電話を片手にもって電話をしながら器用に自転車を漕いでいる。やがてその人とすれ違った、その時に、私は何かとても大事なことを忘れているのを思い出して愕然とした。自転車から転げ落ちてしまい、やっとの思いで立ち上がると辺りは薄暗く(室内のような不思議な暗さで)空気は湿っていてとても嫌な雰囲気だった。



地面はコンクリートになり裸足の足をざりざりと痛めつけた。それでも歩き続けていると、行き止まりになってしまった。どういう材質かよくわからない、遥か天までのびる壁が行く手を遮っている。ああ、ここが目的地かと思ってその場に座り込むと、白い段ボールの箱が置いてある事に気がついた。
うんうん、と思いながら、その箱を開けると、中には何も入っておらず、ただ箱の中から甘い匂いがぶわっと吹き出してきてそれは私の身体にまとわりついてきた。



その匂いを嗅いだらどうしようもなく悲しくなって、ひとしきり泣いた。