生きることと死ぬことについて。

私には今までに二度、死んでしまいたいと思っていた時期がある。
一度目は16の時、大失恋をして、それがまわりの人間関係をぐちゃぐちゃの修復不可能な状態にしてしまい、それでもフられた相手が恋しくて、ああこんなにまわりに迷惑かけて、まだ好きなんてどうしようもないし、相手が手に入らないならもう死にたいなあと思っていた。長いことひきずったが、別の人のことを漸く好きになってどうにかそこから脱する事が出来た。
何故そんなに長くひきずったかというと、恐ろしいことに私は、そんなに辛く苦しい状況だったのにそこから脱する事を拒んでいたからだ。こんなに強く人を想うことは、もう二度とないかもしれないと、根拠のない不安に追われていた。


二度目は実の父親に会った年で、一度も一緒に暮らしておらず、物心ついてから会った記憶もないその人は、困っちゃうくらいしょうもない人物で、なんだかなあと思った。高校を卒業した年の4月に、留学を計画し始めた私はどう考えても足りない留学資金の調達に悩んでいた。そして彼の事を思い出して、一応血の繋がりのある人だし、18までほっとかれたわけだし、どうにかしてもらいましょうと思って一度会いませんかと連絡をとった。隣町のファミレスに行き、「なんでも頼んでいいよ」と言われチョコレートパフェを頼んだ。なんでも頼んでいいよ、なんでも頼んでいいよ・・・これほどこの言葉の意味がわからなかった時はない。深夜の、田舎の、シリアスなシチュエーションのファミレスで、パフェ。私は、気まずさと興奮と18年間の記憶がないまぜになって口に運ぶパフェの味なんてさっぱりわからなかった。パフェを選んだのは「Papa told me」という美しい父子家庭の物語で、可愛い娘が優しいお父さんと喫茶店でパフェを食べるシーンがとても印象的だったので、父子といえばパフェだろうと思って咄嗟に選んだのだった。皮肉過ぎて笑う事も出来ない。パフェを食べ終わると私は、卒業証書や英語のテストのスコアを見せて留学したい旨を告げた。ごにょごにょっとした返事が返ってきた。はなから余り期待はしていなかったのでよかったけど、熱い飲み物があったらぶっかけていたと思う。


それから1年かけて諸々の手続きがあり、どうにか留学することが決まったのだけどその1年間で大分消耗して生きてるのめんどくせえなあと考えていた。でも死なずに留学できた。いいことだ。




わかったことは生き死にに意味はなくて、生きてるととりあえず何か色々することができるし、知らない人に会えたり面白いことがあったり、恋をしたり、ふられたり、おいしいものを食べたりまずいものを作ったり、食べ物が腐ったりすごく楽しいということだ。別に面白いことばかりじゃないけれど、最近は割合楽しく生きている。
私がイギリスに行く前に英語で面接テストをする機会があった。電車が人身事故で遅延していて、面接に遅刻してしまったけれど試験官の方は快く迎えてくれた。試験は一つのテーマについて数分感英語でスピーチをするというもので、そのときのテーマは「どうすれば世界の皆が毎日をハッピーに過ごせるか」だった。
私は
「今、電車が人身事故で遅延してここに遅れてしまった。人が死んで電車が止まるなんてアンハッピーだし、毎日楽しいことばかりじゃない。でも毎日ハッピーなことばかりだったら、それが当たり前になってしまって何が本当に幸せなことか、素晴らしい事か気付けなくなってしまう。だから毎日ハッピーは無理。でも辛いことが続く中だったらどんな小さなことにもハッピーは見いだせると思う。」
とかなんとか、一体自分でも何回Happyって言ったかわからないくらいHappyを連呼してこんなようなことを話した。


生きてる限り楽しく過ごしたいし、行きたかった場所に行けなかったり、やりたい事ができなかったりしないようにしたい。死んだら多分、生きてる時と同じ事は出来ないし、出来る限り長生きしたいなあと思う。あと自分のまわりにいるひとにも長生きしてほしいし、出来れば死んで欲しくない。


樹海に行くにあたって、樹海の歩き方という本を読んだ。著者が樹海を二年間探検して得た情報を元にした本で、内容は主に探検のことと探検中に発見した遺体のことだ。遺体の写真や遺留品の写真も掲載されている。どのような場所でどのように発見されたか仔細に描写されている。樹海に行ったら私もこの著者の様に遺体を発見するかもしれないし、しないかもしれない。




今私は、長生きしたいなあとか楽しく生きたいとか思っているけれど、それはどんなきっかけで暗転するか、誰にもわからない。死にたいと強く思う様なことは、もうないと願いたいし、けれど先の事はわからない。樹海に行って何か変わるかもしれないし変わらないかもしれないけど、どうしてか強く惹かれるので、人数増えて大変そうだけど是非行きたいなーと思っています。