旅に出るまで

毎日が変わらなくて退屈していた。うんざりだ、旅にでたい。変化し続ける毎日。移動し続ける自分。知らない人と会って知らない場所に行くこと。清らかな水のように流れ続けるのが旅ならば、一ヶ所にとどまることは水が腐り続けていくような日常そのものだ。



通勤途中にスターバックスがある。私はソイラテが好きなのだけど、持ち帰りで買う気にはならない。スターバックスでの時間に1杯320円ものお金を払うのであって、他所で飲むなら家で作って持ってきたほうがよっぽどいい。



毎日毎日同じ道を通って通勤しながら、生活のすべてに吐き気がした。変らない日々と変えられない自分にイラついた。なんで私はこうも、同じ状態が続くことに耐えられないのだろう。同じ状態が続くこと、ひとはそれを安定と呼び、そしてわたしはそれを嫌悪している。おかしな話だと思うけど、貧乏でもいいから面白いことがたくさんあるほうがいいのだ。



旅にでよう。お気軽に今の状況を変化させる方法。お金はかかるけど、今年中か、来年頭。決めるとすーっと楽になる。でも具体的には決まっていないからまたすぐに元の状態に戻る。繰り返し。



会社に行きたくないなあと思いながらいつものようにスターバックスの前を通った。そして、ソイラテを買った。しかもトール。いつもはショート。いつもと違うことをした。絶対に持ち帰らないスターバックスを、いつもと違うサイズで買った。その瞬間、カチっと何かのスイッチがはいった気がした。何かが変化していく合図の音みたいに。

今この瞬間にも何かが変化していくことを、もっと機敏に感じ取れたら、430円も払ってソイラテ買わなくても、変化がなくてイライラしたりしないのに。でもわたしのスイッチはスタバのソイラテで、いつもとほんの少し違うことをすればいいのかということにも気がつけた。ありがとうスターバックス。でも自分で作るソイラテのほうが、コーヒー濃い目、甘さ多目で美味しいことに気がついた日でもありました。おわり。