5月の5時半は明るい、まるで悪夢みたいに

青い青い、空が青い。思わず窓の外を二度見た。夢中になって本を読んでいたせいか、すっかり朝だなんて思ったらまだ5時半だ。つい数週間前の5時半はまだ星が瞬いていたはずなのに、私の夜は奪われてしまった。漆黒の空と月と星と静寂が支配する時間。夏がやってくる。ぬるい空気とオレンジ色の夕暮れと、蚊と蝉と擦り傷の季節。
夢を見ているんじゃないだろうか。外の景色はあまりにも作り物じみている。鳥のさえずりや少しずつ動き始める街、冷たい空気を吸ってみてもこれが悪夢にしか思えない。本当の私はこんなさわやかな場所ではなく、背中に汗をかきながら布団のなかでもだえているのではなかろうか。悪夢みたいに綺麗な朝。誰も本当のことなんて教えてくれません。子供が泣きわめいても、たまごが割れても。


そうして日々が過ぎていくけれど、他の人の日々がただ過ぎ行くことをそのまま受け止められない人の多さに辟易する。誰かが青いたまごをもらっても妬んだりせず雛が孵るまで温められるような人ばかりならよかったのにね。きっとたまごから何も生まれはしないけど。あるいはたまごの中にいるのは私自身なのだから。殻を割りたいなんて思わないで、殻の中で過ごしていればよかったのだ。僅かなヒビの隙間から、空が見える。
それは、悪夢のように青かった。